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はじめに
細胞治療とは,再生医療や遺伝子治療,細胞免疫療法などヒト由来の細胞や組織を利用して行われる治療方法の総称であり,細胞プロセシングセンター(cell processing center,CPC)は,その細胞治療を実施する際に患者へ移植される細胞や組織の調製や加工を行うための専用の施設である(図).また,臓器から特定の機能を有する組織の分離作業や,細胞培養や遺伝子導入などさまざまな工程を「細胞プロセシング」と呼んでいる.
細胞治療を目的として患者へ移植される細胞や組織は,その安全性を担保し高品質を保証するため,医薬品などと同じレベルでの製造管理や品質管理が要求される.そのため,細胞プロセシングには製造管理や品質管理が厳密に行える環境が整ったCPCが不可欠となる.
わが国でも,さまざまな細胞やiPS細胞を利用した細胞治療の基礎研究が盛んに進められており,既に医療用具として承認を受けた再生医療製品もある.しかし,基礎研究の成果を速やかに臨床応用するためには,関連する法令の改訂やインフラストラクチャーの整備,そしてCPCの管理や細胞プロセシングを行える人材の育成など多くの課題が山積している.なかでも人材の育成は喫緊の課題である.現時点ではCPCの管理や細胞プロセシングに国家資格は必要ではない.しかし,製造管理や品質管理といった事項には種々の検査手技と検査理論に関する知識が必須であり,臨床検査技師はそのプロトタイプ的人材として最短距離に位置するのではないかと考えられる.本稿ではCPCにおける臨床検査技師の役割と今後の課題について述べる.なお,細胞プロセシングに携わる人員としては,臨床検査技師のほか,当然,薬剤師,農学部,理学部などの出身者も含まれるが,筆者は京大病院に勤務する臨床検査技師であり,本誌の読者層も考慮し,臨床検査技師にスタンスを置いた記載になっていることをお許し願いたい.
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