技術講座 生理
―臨床生理検査シリーズ・5―呼吸器疾患と肺機能検査
安部 信行
1
,
高井 雄二郎
2
1東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部
2東邦大学医療センター大森病院呼吸器内科
pp.107-113
発行日 2009年2月1日
Published Date 2009/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102360
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はじめに
呼吸器疾患は気管支喘息,慢性閉塞性肺疾患(COPD),びまん性汎細気管支炎(DPB),間質性肺炎が代表的な疾患であり,後者の3疾患は慢性の咳嗽や喀痰,労作性の呼吸困難などの症状を呈し徐々に進行する.
わが国で呼吸器疾患に罹患している患者は,潜在的なものを含めるとかなりの人数になると言われている.具体的には気管支喘息で235万人(厚生労働省長期慢性疾患総合研究事業報告),COPDで530万人〔The Nippon COPD Epidemiology(NICE)Study〕と言われ,近年増加傾向にある.それに伴い日本呼吸器学会などから呼吸器疾患の診断,治療に関するガイドラインが相次いで出されるようになった.また,喫煙はすべての呼吸器疾患に負の影響を及ぼし,COPDの原因の80%を占めるとされている.
近年は関連各学会が禁煙宣言を行い,2003年5月に受動喫煙防止を求める健康増進法が制定され,2007年には世界保健機関(World Health Organization,WHO)から受動喫煙防止のための政策勧告がされるなど,全世界的に禁煙活動が盛んになってきている.
呼吸器疾患の診断には,胸部X線やCTなどの画像検査,血液検査に加え,肺機能検査が重要なポイントとなる.肺機能検査を実施するには患者の病状や喫煙歴などの十分な情報を把握しておくことが必要であり,検査時の患者対応や検査データの見方に必ず役立つものと確信する.そこで,今回は主な疾患の臨床と呼吸機能検査のデータの見方について概説する1~6).
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