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はじめに
現在,公にされている抗菌薬感受性試験の内部精度管理手法は,米国のClinical and Laboratory Standards Institute(CLSI;旧NCCLS)1,2)や日本化学療法学会3)によって公開され,ほとんどの検査室がこれに準拠して実施している.
この管理手法は使用する培地性能や抗菌薬の抗菌活性を米国のAmerican Type Culture Collection(ATCC(R))から供給される標準菌株を用いて確認するものであり,感受性試験で得られる結果値〔阻止円径や最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration,MIC),感性や耐性の判定値〕の精密性と正確性を管理するものである.抗菌薬感受性試験はこの精度管理手法に基づいて成績が保証されるが,広い視点で捉えると感受性試験の精度管理はこの範疇のみで論じられるべきではない.つまり以下のようなことを念頭において管理されるべきであると考える(表1).
抗菌薬感受性試験は患者の感染症の原因となる,いわゆる「起炎菌」を分離培養法によって抽出するところから始まる.まずはじめに検体が検査に適した良質な検体(感染を示唆する多核白血球の存在など)であるかを吟味する.検体中には「起炎菌」のみならず,常在菌や環境中細菌などが混在しているため,これらを除外しながら「起炎菌」を絞り込む.次に,「起炎菌」に対する感受性試験の結果値が,抗菌薬療法の効果を真に反映した成績となるかを吟味して報告する.
以上,それぞれの過程が精密かつ正確に行われるためには,CLSIが示す内部精度管理手法だけでは達成できない.つまり,感染症病原体診断と抗菌化学療法の精密性と正確性を検査値をもって保証できる内部精度管理体制を確立する必要がある.
本稿では,一般的な内部精度管理手法に加え,いまだ標準化された指針はないが,今後あるべき新しい抗菌薬感受性試験の内部精度管理の概念を解説したい.
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