トピックス
産科領域の自己血輸血について―適応と現状
渡辺 典芳
1
1国立成育医療センター周産期診療部産科
pp.290-292
発行日 2008年3月1日
Published Date 2008/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102035
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
急性の産科大量出血に対応するためには,輸血療法は必須の治療となりえます.しかし,分娩時の出血の問題点としては,①いつ発生するかわからない,②事前に出血のリスクがないとしていた場合でも輸血の可能性がある,③輸血所要量としては大量であり時間的緊急性も高い,といったことがあります.通常分娩に伴う輸血は決して高い頻度で起こるわけではなく1~2%とされています.
しかし,事前に多量出血が予測される場合には十分量の血液の確保が必要となります.このような場合には自己血輸血を選択するメリットがあります.また,血液型が稀な場合(例:Rh陰性)や,他人の血液に対して異常反応を示す抗体(不規則抗体)を保有している患者の血液確保も,安全性のためには考慮してよいでしょう.
自己血輸血のマニュアル・ガイドラインとしては,厚生労働省より「自己血輸血:採血及び保管管理マニュアル」1),日本輸血学会より「自己血輸血ガイドライン改定案」2)が提示されていますが,適応患者の項目において妊産婦に関する詳しい言及はされていないことが現在の大きな問題点です.
現在,当センターでは3年前より産科領域での自己血輸血の安全性の検討を行っています.本稿では自験例の結果をご紹介しつつ産科領域の自己血輸血につきお示しします.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.