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はじめに
加齢性エプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr virus,EBV)関連B細胞リンパ増殖異常症は,2003年に提唱された比較的新しい疾患概念である.明らかな免疫不全の既往のない高齢者に発生し,その疾患スペクトラムには反応性のものから明らかに腫瘍性のものまで多様な病型が含まれる.加齢に伴う免疫機能の低下に起因する免疫不全関連リンパ増殖異常症と目される.今後,類例のない高齢化社会に向かうわが国において患者の急速な増加が予測され,本疾患の認識は重要である.その診断に際してEBNA2(EBV nuclear antigen2)免疫染色は,免疫機能不全を把握するうえで重要であり,診断に有意である.
EBV関連リンパ腫あるいはリンパ増殖病変には,しばしば患者背景に免疫機能異常・不全の介在が示唆され,病理学的に節外病変が多く反応性要素に比較的富むなど,いくつかの特徴が指摘される.反応性のものから腫瘍性のものまで疾患スペクトラムが幅広く,腫瘍性か反応性かが必ずしも定かではない境界領域病変を包含する.発生には,個体レベルでの遺伝的素因や免疫状態に加え社会・環境要因が複雑に関与する.また,EBV関連リンパ腫は,WHO(World Health Organization,世界保健機関)リンパ腫分類1)ではB細胞リンパ腫,T細胞リンパ腫,NK(natural killer)細胞リンパ腫,ホジキンリンパ腫(Hodgkin's lymphoma),免疫不全関連リンパ増殖異常症の各項目に認められる.したがって,個々の症例がこれらのいずれに相当するかが,しばしば問題となる.本稿では,最近急速に問題となりつつある加齢性EBV関連リンパ増殖症とEBNA2免疫染色について解説する.
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