増刊号 メタボリックシンドローム健診検査技術マニュアル
総論
11. メタボリックシンドロームの疾患概念
廣井 直樹
1
,
芳野 原
1
1東邦大学医学部医学科内科学講座(大森) 糖尿病・代謝・内分泌科
pp.1096-1101
発行日 2007年10月15日
Published Date 2007/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101876
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はじめに
2002年の世界保健機関(World Health Organization,WHO)のWorld Health Reportでは,運動不足と過栄養(高脂肪・高カロリー食)による肥満人口の世界的な増加を背景に心血管疾患が増加し,世界の全死亡のうち30%までが心血管疾患に起因していると報告している.世界の平均寿命の伸延には心血管疾患対策が重要であり,新時代のグローバルな健康施策であると位置づけている.わが国でも2002年の厚生労働省の人口動態統計によれば,心血管疾患での死亡率は30%弱と悪性新生物による死亡率に匹敵する数であり,特に心疾患による死亡は着実に増加している.
心血管疾患の増加は,取りも直さず動脈硬化が進展している人が増えていることとなるわけだが,動脈硬化の進展に関与する因子としては,単独要因でなく多彩な要因が絡み合っていると考えられる.肥満,高脂血症,高血圧,高血糖,喫煙などが動脈硬化のリスクファクターとして考えられているが,それらの危険因子の保有数が増えるほど冠動脈疾患発症の危険度が上昇することが知られている.このことは一人の人間に複数のリスクファクターが集積する病態,いわゆるマルチプルリスクファクター症候群が動脈硬化性疾患や心血管疾患の背景にあることを明らかにしている.
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