検査じょうほう室 一般:一般検査のミステリー
尿蛋白陰性患者検体における円柱の出現
佐藤 信博
1
,
舛方 栄二
1
1東邦大学医学部付属大森病院臨床検査部
pp.648-650
発行日 2003年7月1日
Published Date 2003/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101465
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尿蛋白陰性
尿中蛋白が約30mg/dl以下であり,試験紙法による定性検査において検出できない場合,尿定性蛋白は陰性とされる.健常者でも,100~150mg/日までの蛋白が尿中に排泄されているが,通常使用されている尿試験紙法では検出されない.また,生理的蛋白尿とされる運動負荷後や発熱時などにみられる蛋白尿は起立性も含め一過性のものであり,健常者でも陽性となる場合がある.近年,蛋白尿が単なる糸球体障害の指標から尿細管・間質障害の原因因子,悪性化因子としても注目されてきている.尿定性検査で陰性であっても,糖尿病性腎症微量アルブミン尿期(30~300mg/日)のごとく,病態が進行している疾患もあるため,ほかの臨床情報と併せ留意する必要がある.
糸球体障害
糸球体基底膜は,毛細血管腔の内皮細胞と尿腔側の上皮細胞に挟まれた構造となっている.基底膜は陰性荷電によるチャージバリヤーと,サイズバリヤーと呼ばれるサイズによる蛋白の蒒い分けで選択的濾過1) を行っている(図1).内皮細胞は有窓構造を持ち,基底膜は毛細血管内の血漿と常に接している.そのため基底膜は高血圧や虚血などの循環障害に起因して血漿中のさまざまな障害性物質の侵襲を受けやすい2).特に,過剰な免疫反応による自己抗体,免疫複合体などの沈着により障害される.そのほかにも血小板・フィブリン血栓,ずり応力や内圧も障害因子として働いている.この基底膜障害が持続的に行われることにより,やがて低分子蛋白だけでなく大型の蛋白も漏出してくるようになる.
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