検査じょうほう室 生化学:おさえておきたい生化学の知識
二価の金属イオンを用いないHDL-C測定法の測定原理
木村 正弘
1
1駿河台日本大学病院臨床検査部
pp.52-54
発行日 2003年1月1日
Published Date 2003/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101305
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はじめに
脂質の運搬を司どるリポ蛋白は,超遠心法によって,高比重リポ蛋白(high density lipoprotein;HDL),低比重リポ蛋白(low density lipoprotein;LDL),超低比重リポ蛋白(very low density lipoprotein;VLDL),カイロミクロン(chylomicron;CM)などに分けられます.リポ蛋白の構造は,表層部に蛋白質(アポリポ蛋白),リン脂質(極性基+脂肪酸残基),遊離型コレステロール(free cholesterol;FC)が存在し,中心部に中性脂肪(トリグリセリド)とエステル型コレステロール(cholesterol ester;CE)が存在する球状と考えられています1).リポ蛋白のうちでもHDLは抗動脈硬化作用を有することから,このリポ蛋白中に含まれるコレステロール,すなわちHDL-コレステロール(FC+CE)を定量することは臨床的に重要な意味を持ちます.その測定方法は“超遠心法”が基準法ですが,特殊な機器を必要とし,測定操作も煩雑であることから,一般の検査室では数々のポリアニオン(ヘパリン,デキストラン硫酸,リンタングステン酸など)と二価の金属イオン(Mg2+,Ca2+ など)を組み合わせたHDLのみを分離するための“沈澱分画法”が広く用いられていました.現在では自動分析器を使って,化学的な手法でHDLのみに含まれるコレステロールを定量するホモジニアスアッセイ(homogeneous assay,直接測定法:直接法)が開発され, いまでは HDL-コレステロール(HDL-C)測定法の主流となっています.
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