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病理医と病理担当の検査技師(以下,病理担当技師)の関係について,中規模の県立病院に勤務する病理,細胞診担当技師の立場から,その現状と問題点,およびこれからの技師像について過去に行ったアンケートの集計結果と筆者自身の経験を踏まえて考えてみた.
1997年5月,名古屋市で開催された第46回日本臨床衛生検査学会において病理検査研究班はパネルディスカッション「これからの病理検査の展望」を企画した.その資料作成の目的で会員の勤務施設に協力を依頼し,115項目と広汎にわたるアンケート調査1)を実施した.840部のアンケートを配布して644施設から回答があった(回収率76.7%).集計結果から,大学病院や病理部として独立している施設での人員,設備,システム,業務内容などの状況に比し,常勤病理医が1人または非常勤で対応している中小の施設(475施設,73.8%)では担当技師も1~2名程度のところが多く労働環境は決してよいとはいえず,また,機械の整備やシステム化が遅れ,先端技術の導入も少ないなど設備やシステムは対照的であった.これらの中小の施設では,病理医が不在時の迅速検査,解剖や切り出しなどへの病理担当技師の対応が常に問題点となっていて,病理検査業務の内容や範囲の曖昧さが浮き彫りになった.業務内容には,標本作製に関することはもちろん最新技術の習得,臨床医や病理医との情報伝達や診断の助言など,基礎的な技術から診断業務に関することまで幅広く取り上げられていた.これに対して病理担当技師からの要望,将来像として,遺伝子診断など先端技術の習得,病理診断への関与(診断補助,標本スクリーニングなど表現はまちまち)など,幅広い業務関与のできるヒストテクノロジスト(当時の名称,仮称)への期待が出ていた.ただし,この時はヒストテクノロジストの認定制度の要望はあったものの業務範囲や責任などの具体化した資料に乏しく,また,深く論議はされなかった.
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