検査じょうほう室 生化学 腫瘍マーカー・3
肝癌マーカー
花尻 和幸
1
,
光井 洋
1
1東京大学医学部附属病院消化器内科
pp.473-476
発行日 2006年5月1日
Published Date 2006/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100429
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はじめに
わが国における肝細胞癌の9割強はB型,C型のウイルス性慢性肝炎,肝硬変を発生母地としており,特に肝硬変からの発癌率は年率7%にも達している.肝細胞癌の腫瘍マーカーは,これら高危険群に対する定期的スクリーニングにおいて,主に超音波検査などの画像検査とともに,重要な役割を担うことになる1,2).なぜなら,早期診断に基づき根治的治療の選択を可能にするだけでなく,予後の予測,治療効果の判定,再発の指標としても威力を発揮しているからである.
今回,肝細胞癌の診断に広く使用されているα-フェトプロティン(α-fetoprotein,AFP),その糖鎖変異であるAFPレクチン分画(AFP-L3)とPIVKA-Ⅱ(protein induced by vitamin K absence or antagonist-Ⅱ,ビタミンKの欠乏ないし拮抗により誘発される蛋白質-Ⅱ)について述べる.肝細胞癌に対するラジオ波焼灼療法が確立され3),癌発生の母地である慢性肝炎に対しても広くインターフェロン治療が行われている現在,これらの腫瘍マーカーと熟達した画像検査とを併用することで,根治的治療の機会が増え,生存率の向上,ひいては肝癌撲滅にもつながるものと予想される.ちなみに,わが国では,他国に例をみないことに,これら3種の腫瘍マーカーがいずれも保険適用であり,広く用いられている.
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