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はじめに
病院電気設備は,医療機器や医療設備の安全かつ適正な運用をするうえで重要な役割を担っている.JIS T 1022「病院電気設備の安全基準」には,適切な医療を行ううえで必要な,医用接地,非接地配線,非常電源,医用室の電源回路などの在りかたに関する要求事項が規定されている.病院の電気設備をより理解するために,このJISの内容を学んでみよう.
多数の医療機関が被災した阪神淡路大震災は,10年経った今でも,その凄まじさは記憶に生々しい.この震災で「水,電気,ガス」のいわゆる“ライフライン”の確保が,一般生活はもちろん,医療にとっても最重要課題であることを,改めて思い知らされた.
現代医療は,高度なME機器に支えられている.これらは当然ながら「電気設備」なしでは動かない.その「供給信頼性の確保」は,現代医療の見えざる必要要件である.
一方,電気で作動するME機器は,感電事故の“加害者”ともなりうる.ME機器自体の漏電対策はJIS T 0601-1「医用電気機器:安全に関する一般的要求事項」で厳しく規定されている.しかし,これは「病院電気設備」の整備が前提になっている.特に,接地をとることによって安全性を確保する「クラスI機器」には「保護接地設備」が不可欠である.病院電気設備は医療の信頼性・安全性確保のうえで重要な役割を担っている.
現代医療を陰で支えている「病院電気設備」の必要事項を決めているJIS T 1022「病院電気設備の安全基準」は,1982年に制定されたが,その後,医療現場を取り巻く環境の変化を受けて,改正作業を行い,1996年に改正版が発行された.さらに,病院電気設備の安全性に関する要求の高度化,配線技術の向上および医療機器の高度化などの環境の変化を受けて,今般,小改訂が加えられた.「病院電気設備」を知るためには,このJISを理解しておくことが重要であるので,以下に「改訂原案(2005年11月発行予定)」を基に,その「見かた・考えかた」をやさしく説明しよう.
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