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破壊性甲状腺炎
無痛性甲状腺炎および亜急性甲状腺炎は甲状腺が破壊されて甲状腺ホルモンが血中に漏出する代表的な破壊性甲状腺炎である.血中甲状腺ホルモン増加によりもたらされる動悸などの症状は甲状腺中毒症(thyrotoxicosis)と称される.多くの甲状腺破壊では甲状腺中毒症に続いて甲状腺機能低下症が出現する.ウイルス感染と考えられている亜急性甲状腺炎と,自己免疫機序によると考えられている無痛性甲状腺炎とでは甲状腺機能低下の後に甲状腺機能が回復することが多い.一方,放射性同位元素(アイソトープ)治療による破壊では永続的な低下症となることがある.表1に破壊性甲状腺炎の原因を示す.
甲状腺ホルモンの作用とその症状
甲状腺ホルモンの生理作用には熱産生,β受容体を介した交感神経反応性増加,代謝亢進,そして各臓器の増殖刺激がある.甲状腺ホルモン増加による症状を表2に掲げるが,熱産生のため暑がり,多汗である.交感神経機能亢進により動悸,頻脈となる.心房細動をしばしば引き起こすことはよく知られているが,多くは可逆性であることが特徴である.脂質代謝亢進により血清コレステロール値は下降し,糖代謝亢進により耐糖能異常を呈する.基礎代謝亢進により体重減少をきたし,食欲亢進を伴う体重減少としてよく知られている.消化管平滑筋運動の増強により下痢・軟便を訴える.骨回転が亢進しALP(alkaline phosphatase,アルカリホスファターゼ)上昇や高Ca血症を示し,稀に尿路結石となる.一方,甲状腺ホルモン欠乏により寒がり,徐脈,コレステロール上昇,浮腫などを呈する.先天性甲状腺機能低下症では成長障害,知能発達障害を呈する.表2に成人における甲状腺中毒症と甲状腺機能低下症との主要症状を示す.
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