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ハーバード大学医学部(Harvard Medical School,HMS)は1782年9月19日にケンブリッジ市にあるハーバード大学メインキャンパス内のハーバードホールで産声を挙げた.当初は学費の代わりに,聴講券を購入して講義を聴講しており,学術的な備品も少なく,現代のような医学教育というより徒弟制度に近い形で,臨床教育を行うための教育病院も存在せず,わずかな臨床トレーニングが医師資格取得に必要なだけであったという.1810年に校舎はケンブリッジ市からボストン市内に移設し,一時期Massachusetts Medical College of Harvard Universityと呼称されていた.1847年から1883年までは最古の教育病院である,マサチューセッツ総合病院(MGH)のバルフィッチビルディング横に移設した.その間の1869年に赴任してきたエリオット医学部長により筆記試験や履修カリキュラムの変更が提唱され,3年制の系統立った医学教育のカリキュラムが作成され,米国での医学教育の標準が確立された.1883年に再度の引っ越しで現在のボストン公立図書館がある中心地のコープリーに移動し,最終的に1906年にロングウッドに移転し現在まで至っている.
開設当初は3名の教授が在籍し,そのうちの1人であるベンジャミンウォーターハウス教授はヨーロッパで教育を受けていた.1796年にイギリスのエドワードジェンナー博士が牛痘を接種することで天然痘を予防する,種痘に成功して1798年には印刷物として発表した.この報告をヨーロッパと交流のあるウォーターハウス教授が最初にアメリカに紹介した.まず自らの家族に接種を行うなど,精力的に予防接種の効能をボストン地域で試して,その効果が認められて全米に広まった.
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