学会印象記 第21回電気泳動学会
タイムリーなシンポジウム—血清リポタンパクの電気泳動分析
山崎 晴一朗
1
,
有馬 正
1
1久留米大中検
pp.182-183
発行日 1971年2月15日
Published Date 1971/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917303
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αf-globulinの研究成果
第21回電気泳動学会総会は,去る11月6,7日の両月,宇部市宇部窒素保健会館において,山口大学医学部生化学教室の,中村正次郎教授会長のもとに開催された.特別講演およびシンポジウム各1題,一般演題の発表は,追加演題を含めて40題で,一般臨床学会に比較すれば,その演題数は少なかったが,各演題に十分な時間がわりあてられており,参加人員も350名におよび終始なごやかな雰囲気のもとに,発表あるいはフロアーからの討論も行なわれ,比較的充実した学会であったといえよう.
私自身この学会には初めての出席であり,今回の一般演題の特徴については記すことはできないが,特に印象に残ったことは,方法的に免疫拡散法およびディクス泳動を応用した研究発表が多かったことである,その中で特に興味をひいたのはαf-globulinについての研究発表である.周知のようにαf-globulinは,成人血清には存在しない.胎児特有のタンパクでTatarinovの報告以来,原発性肝癌患者の血清中に特異的に,しかも高率に検出されることがわかり,現在肝癌の有力な診断法となりつつあるが,その診断法としての価値およびこのタンパクの精製と性質に関する研究報告が行なわれた.またディスク泳動により,胎児および肝癌組織抽出液を分離し,αf-globulin以外の胎児特異性タンパクについても検索しようという試みもみられた.今後の問題としては,αf-globulinを結晶化しこれを利用して,いかに感度および特異性の高いものにするかがあげられるが,臨床検査としてルーチン化される日も遠くはないかと思われる.
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