検査室メモ
培養基今昔
大橋 経雄
1
1国立栃木療養所研究検査科
pp.1090
発行日 1968年12月15日
Published Date 1968/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917271
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9月はめずらしく4社のプロパーが,続けざまにやってきた。その中でA社のプロパーが,これは最近作ったものですと置いていった"製品要覧"を見て,つくづく隔世の感を深くした。というのは71ページにまとめた"要覧"には,培地,調整検査薬,血清検査薬など臨床検査試薬関係が120余も紹介されていたが,職場で細菌を担当している私にとって,こうした即席の試薬が,用にのぞんで電話一本でいつでも手に入ることのできるようになったことは,かつてその昔,さまざま自らの手で培地をつくってきた私たちにとっては,実にありがたいことだと思うのである。乾燥培地に精製水を加えただけで,ものの役にたつのであるから,これはありがたいとというより,むしろ助かっているといった方があたっているかもしれない。
ところで,いまでこそこうした結構な乾燥培地が,つぎつぎと市販されているが,かつて私がこの検査の仕事に入った時代は,前にも述べたように,用にのぞんで培地はみんな自らの手でつくったのである。培地を自らつくるということは,仕事の忙しいような場合は,なんともめんどうなもので,特に糖培地の製造は他の仕事の能率を低下させた。寒天をはかり,ペプトンもはかる。肉水もつくれば,pHも見る。手なれた仕事であっても各種の培地をつくるとなるとなかなか容易でない。それが乾燥培地の出現で,培地をつくるわずらわしさはまったく解消してしまったわけである。
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