入門講座 血清
血液型判定法—その2交差適合試験
松橋 直
1
1東大・血清学
pp.675
発行日 1968年9月15日
Published Date 1968/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916478
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輸血の際の注意
輸血のときは,ABO型が同型であるからといって,安易に輸血を行なってはならない。なぜなら,まず第1に,これはあってはならないことであるが,ABO型判定の誤ちがある可能性が零ではないからである。第2に,以前に輸血をうけたとこがあると,ABO型以外の血液型が不適当であるため,それに対する抗体が産生されていることがあり,今度輸血する血液が対応する抗原をもっている可能性があるからである。第3に,輸血したことがなくとも,何らかの血液製剤,たとえばヒト血漿などを注射したことがあると,そのうちにあった微量の抗原が,これに対応する抗体を産生することがあり,この場合も供血者血液がおなじ抗原をもっている可能性があるからである。第4に,婦人,ことに経産婦の場合は,父母からの遺伝によって決定された胎児の血液型が異なっていると,妊娠中に胎児の血液成分が母体に侵入する結果,異なった型抗原に対応する抗体が産生されていることがある。そのため,経産婦に輸血する場合は,特に交差適合試験を厳重にしなければならない。第5に,ごく少ないとはいえ,人によっては,自然発生した抗Lea抗M,抗Pなどの抗体をもっていることがある。
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