講座 臨床生理学講座Ⅰ
脳波<1>—臨床脳波
吉井 信夫
1
1慶大医学部脳神経外科・中検脳波室
pp.827-831
発行日 1967年11月15日
Published Date 1967/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916256
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
脳波の歴史
いうまでもなく脳波は生物に脳が発生したときからあったはずである。しかし脳から発する電気が存在することには誰も気がつかなかったし,また想像もできなかった。何千年いや何万年前のむかしから,てんかん患者は今日では広く知られている,棘波(スパイク)や棘—徐波を示していたであろう。電気活動は脳ばかりでなくわれわれの体の内外(胸,腹,手,足)でも常に微小な電気が変化し動いているわけである。これらをキャッチするには特別の器械が必要で,そのために必要な科学,ことに電気科学が進歩するまで待たなければならなかった。脳波は電気現象であるが体の中のほかの部分の電気現象とくらべて非常に微小なので,一番遅れてその存在することが証明された。
世界で初めて動物(ウサギおよびサル)の脳から脳波を記録したのは英国のCarton (1875年)であるが,その後いろいうな学者が光刺激を与えたり,そのほか種種の刺激を加えた際の脳波について研究を行なった。しかしその頃の電気器械の感度が悪かったのであまり良い記録はできなかった。このような動物での実験のつみ重ねがあったのち,現在臨床脳波の父といわれるHansBerger (図1)が1900年代初めより脳波について研究を始め,ついに1924年に人間の脳波を記録することに成功した。
Copyright © 1967, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.