研究
顕微鏡用合成封入材の研究—とくに各種封入材との比較
秋山 太一郎
1
,
上野 節子
1
1日本医用高分子材料研究所
pp.1160-1163
発行日 1966年11月15日
Published Date 1966/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916020
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まえがき
光学顕微鏡用封入材は組織標本をつくる上になくてはならないものであるが,これまで研究の対象として,ほとんどとりあげられていない。そこで封入材の現状をながめ,さらにわれわれが合成したものを中心として批判することにする。昔から"封入材といえばBalsam"というように唯一のものとなっていたが,これは天然物であるために産地,精製度,保存条件などによって材質の不均一性はまぬかれない。それのみならず,これらの条件に関連してBalsamの酸化による染色の不安定など致命的な欠点がある。にもかかわらず代替的なものがなかったので,長い間依存せざるを得なかった。ところが1950年代になって高分子化学の急速な発展にともない,わが国のみならず欧米でも合成封入材が登場してきた。今日われわれが知りえたものは米国にClarite,HarlcoSynthetic Resin (H.S.R.),Permountがあり,さらに1種類,名称は明らかではないがドイツにあるときいている。いずれも材質が何であるか不明である。わが国では著者の一人秋山1)が1954年スチロール・アクリル系のものから合成したものであるが,今日Bioleitの商品名で市販されている。さて,Bioleitが世にでてからすでに10年余を経た今日としては再検討の余地も十分考えられる。そこで,素材は同系のもので純度,分子量分布などの点をさらに改善した新しい封入材を合成することができた。
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