技術解説
イースト型真菌同定法—その分類基準と実験法
曾根田 正己
1
1東大・細菌学長尾研究所
pp.134-140
発行日 1966年2月15日
Published Date 1966/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915903
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はじめに
イースト(酵母)という名称は分類学上の群を表現するものではなく,細菌,かび,きのこ,放線菌などに対しての用語である。そのためイーストに与えられた概念は研究者によってかなりの相異が見られる。ただイーストの概念を規定する基準となっているのはSaccharomyces属酵母の性質であって,「単細胞で生活環の大半を過す真菌」「外観が糸状とならず泡沫状を呈する真菌」「出芽(あるものは分裂)によって栄養増殖をする真菌」「アルコール発酵を営む真菌」などの性質の過半または全体を満足するものを指している。
ことに医学領域に使われている「イースト型真菌」となると,一層不明確な用語となり,条件によって集落の外観が酵母状を呈するSporotrichum schenckü,Histoplasma capsulatum,生活環の一時期に出芽細胞を形成するBlastomyces属菌,さらに黒色の糸状菌で分生胞子(conidia)の形成にあたって分芽法をもって繁殖するCladosporium(Hormodendrum)までイースト型真菌としている場合がある。
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