多変量解析の応用・5
主成分分析
古川 俊之
1
,
田中 博
1
1東京大学・医用電子研究施設
pp.577-583
発行日 1980年5月15日
Published Date 1980/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915464
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はじめに
これまで紹介した重回帰分析や判別分析などの多変量解析法は,患者の個体計測値群のほかに予測や判別の目的変量が存在し,数学的分析は個体計測値と,この基準となる目的変量との適切な関係式を探すものであった.今回解説する主成分分析と次回の因子分析は,上記の手法とは違って特性変量群全体の変動から幾つかの独立成分を抽出して記述・要約する手法で,外的な基準となる目的変量はない.因子分析も分析の観点が異なるだけで,同様に外的基準のない多変量解析に属している.
相関分析(連載第2回)でも述べたように,個体における各計測値は通常相互に関連し合っていて独立ではなく,それぞれの関係の深さは相関係数行列で表すことができる.これらの計測変量群の中から,各計測値の変動を説明する独立な成分を抽出できれば,変量全体の変動の構造を理解し,情報を要約するうえですこぶる有用である.主成分分析とはこのように,計測された変量全体の変動の中から独立に変動する成分を抽出し,データ変動の構造を要約する手法である.医学における疾病の認識は,多数の観測ベクトルを介してのみ可能であるが,主成分分析は各種の臨床計測値群によって与えられる病像プロフィールの構造を記述し,一定の内的傾向を抽出するのに役立つものと考えられる.
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