今月の主題 集団検診の技術
技術解説
公害検診と臨床検査
高原 喜八郎
1
1神奈川県立衛生短期大学
pp.131-140
発行日 1980年2月15日
Published Date 1980/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915373
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公害検診の種類を考える前に,公害とはいったい何であろうかを考えてみたい.1967年に制定された公害対策基本法によれば,公害とは"事業活動など人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染,水質の汚濁(水の状態および水底物質の悪化を含む),土壌の汚染,騒音,振動,地盤沈下および悪臭によって,人の健康または生活環境に被害が生ずること"と規定されている.しかしこれらのほかにも食品添加物,電波障害,日照阻害,ゴミ廃棄物,医薬品,原子力発電に伴う放射能汚染などのように大衆が被る被害や迷惑なども広く公害と呼ばれているようであり,更には多数の人間が特定の場所や地域に集合して活動する結果生ずる(特定の事業にはよらない)被害,例えば満員電車やデパート内の人混みで感冒をうつされたり,酸素欠乏空気を吸わされて狭心症の発作を起こすことなども広い意味での公害であり,この場合は自分自身も他人に対して公害の原因となっていることが特徴である.
自動車の使用によるトラブルについてみても,大気汚染は直接生体に影響する公害であるが,大渋滞による時間のロスや心理的イライラも財産や精神衛生上に悪影響をもたらす公害と言ってよいであろう.また一方,特定の職業活動をしていることによって生ずるじん肺症,難聴,放射線障害,ガス中毒,有機溶剤中毒,職業性皮膚疾患,同鼻疾患,同歯科疾患,そして金属中毒などを包含する職業病も公害病の中に入れてよいであろう.
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