主要疾患と臨床検査・17
公害病と臨床検査
西川 滇八
1
1日大公衆衛生
pp.469-473
発行日 1970年5月15日
Published Date 1970/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542906780
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ロンドン市スモッグ事件
1952年12月5日,ロンドン市は濃いスモッグにおおわれてしまった,ロンドドン名物の濃霧ではあるが,この時には煙の粒子が核となってできた霧であるから,黒い霧であった。ときの要人であったチャーチル(W.Churchill)卿も自邸から市内にはいると自動車の窓を堅く閉ざして,カーテンをおろし,少しでも市内の汚れた空気が車内に侵入しないように心がけたほどである.この黒い霧は5日間も続いた.
市内のバスは動けなくなり,交通警官の先導でのろのろ運転をした.列車も速度が出せず,市内の社会的機能は極度に停滞してしまった,陸上の交通機関ばかりでなく,海上の船,空中の飛行機までロンドンには近づけなくなった.ただ,救急患者を運ぶ自動車だけがふだんよりも活発に動いていた.それは自宅に引きこもっていた気管支炎や心臓病の患者たちが,スモッグのために症状が悪化したので,彼らを病院に送り込まなければならなかったからである.
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