技術解説
中枢神経系の染色—主として銀染色について
鬼頭 つやこ
1
,
松下 正明
2
1東京都精神医学総合研究所神経病理部門
2東京都精神医学総合研究所
pp.1500-1513
発行日 1978年12月15日
Published Date 1978/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542914963
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神経系,殊に中枢神経系の病理組織検査には他の身体臓器の組織検査と異なる幾つかの特徴がある.その一つには神経系では細胞の分化が高度で個々の細胞成分の組織化学的特異性が顕著であることである.実質細胞である神経細胞でも胞体,軸索,樹状突起,髄鞘の各成分,グリア細胞ではマクログリア,ミクログリア,オリゴデンドログリアの細胞及び線維など各々組織化学的特性が異なりそれぞれの成分に応じて,それに適した幾つかの特殊な染色法がある,すなわち,ある一つの染色で神経組織のすべてを染め出すことは不可能と言える.したがって,これらの幾つかの染色を総合して初めて神経系の病理所見を把握することができる.第二の特徴は中枢神経系の構造の多様性である.ここでは病変の局在あるいは広がりが異なればその病変の臨床病理学的な意味は全く違ってくるので,標本の切り出しは,臨床症状を十分に考慮のうえでなされねばならない.また脳の肉眼的な変化がないときでも,前頭葉,側頭葉,頭頂葉,後頭葉,基底核,脳幹,小脳を含む切片を作ることが最低限要求さ浪る3).多くの場合,前額断が行おれているが,最近,臨床でCompu-terized axial tomography (CAT)が盛んに用いられるようになったのて,それに応じた切り出し(水平断)が要求されるようになってきた.
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