技術解説
銀染色(鑛銀法)について
渡辺 恒彦
1
1東京逓信病院病理検査室
pp.499-502
発行日 1961年8月15日
Published Date 1961/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905862
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顕微鏡組織標本の各種染色法の中で,銀染色(正しくは鉱銀法silver impregnation)はむずかしい染色法に属すると一般に考えられている。よく知られているように,この銀染色の方法は,1904年にBielschowskyが神経原線維染色法として紹介し,翌年にMareschが,いわゆる格子線維染色に応用したのがはじまりである。染色の原理はきわめてむずかしいもので,現在でも完全に明らかにされてはいないようであるが,要するに銀のある種の錯塩を用いて,一定の条件のもとで「鉱銀impregnate」することが,銀染色の特徴とされている。
銀染色は,そのはじまりが神経系の染色と「格子線維」の染色との二つの系統であつたので,そののちも主としてこの二つの系統について変化,発展した。これらの染色は,当初は凍結切片に対して行なわれたのであるが,次第にパラフィン切片に応用されはじめ,特に格子線維—というよりもむしろ結締織嗜銀線維とよぶ方が正しい—の銀染色法は,今ではほとんどパラフィン切片に限定してしまつたといつて差支えない。凍結切片に比べでパラフィン切片がいろいろの操作の上からはるかに便利ですぐれていることは,もはや周知のことである。ところが,神経系の銀染色では,まだ凍結切片でなければよく染まらないものが実はかなり多数あるのである。
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