特集 酵素による臨床化学分析
酵素利用技術
1.酵素の固定化と臨床化学分析への応用
高阪 彰
1
1名古屋大学・中央検査部
pp.1186-1202
発行日 1978年11月1日
Published Date 1978/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542914919
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はじめに
我々が日常の臨床化学検査で酵素を試薬として利用していて感ずることは,値段が高いこと,安定性に欠けるので保存のためには温熱,pHなど細かい点に注意を払う必要があること,測定時に共存物質の影響を受けやすいことなどがある.もちろん,酵素には他の化学試薬の持っていない優れた利点,例えば高い基質特異性,温和な条件下での反応加速性などがあるからこそ,これだけ酵素的測定法が日常検査に応用されるようになったのであるが,上に述べた酵素の持つ欠点を少しでも取り除くことができたらとの願望は,だれしもが抱くことであろう.固定化酵素の臨床検査への応用は,このような背景の中から生まれてきたものであり,酵素の最大の特性である触媒活性を最大限に利用することにより,通常の使用形態である液性酵素(溶液状酵素)にみられる問題点を解消することを目的とするものである.
1916年にNelsonとGriffinは,インベルターゼを活性炭に吸着させると,活性が長期にわたって保持されるので,繰り返し測定が可能であるとの報告をしているが,酵素の有効利用を目的とした固定化酵素の研究は,1950年代まではほとんど行われていない.1960年代には,工業的応用を目的とした研究が多く,1970年代に入ってからは,酵素工学の中心的課題として,基礎的なものと応用的なものとがからみ合って急速な発展を遂げつつある.
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