総説
接触因子に関する進歩—Fletcher因子及びFitzgerald因子をめぐって
斎藤 英彦
1
1Case Western Reserve大学・内科
pp.1069-1073
発行日 1977年10月15日
Published Date 1977/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542914498
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接触因子とは
一般に血液凝固は血液の異物面との接触により活性化される内因性機序と,組織液の混入により始まる外因性機序とに分けて考えられている(図1).内因性に関与する凝固因子の欠乏(例えば血友病Aにおける第Ⅷ因子欠乏)は部分トロンボプラスチン時間(PTT)の延長により,また外因性の異常(例えば第Ⅶ因子欠乏症)はプロトロンビン時間延長によりそれぞれ検出される.さて接触因子とはこのうち内因性機序の最も初期に働く因子をさす.今から13年前に発表されたWaterfall1)またはCascade2)説では,図1の網伏せ部分のように,第ⅩⅡ(Hageman)因子及び第ⅩⅠ(PTA)因子の二つに限られていた.血液が異物面と接触するとまずⅩⅡ因子が活性化され,次いで活性化第ⅩⅡ因子が第ⅩⅠ因子を直接に活性化すると推測された.すなわち異物面と第ⅩⅡ因子のみで第ⅩⅠ因子を活性化すると思われていた.しかしながら,最近数年間に二つの新凝固因子(Fletcher因子及びFitzgerald因子)も第ⅩⅠ因子の活性化に必要であることが発見されたために接触因子系もかなり複雑になってきた.血液凝固学説のうちでも近年最も大きな変化をみた分野と言えよう3).本文においてはこの二つの新因子の発見,性状,測定法,各種疾患における変動,及び凝固系における役割につき簡単に述べたい.
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