今月の主題 死の判定と検査
技術解説
死の判定における循環器検査
谷川 直
1
,
小沢 友紀雄
2
Naoshi TANIGAWA
1
,
Yukio OZAWA
2
1日本大学板橋病院循環機能検査室
2日本大学医学部第二内科学教室
pp.972-979
発行日 1988年9月15日
Published Date 1988/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913733
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死の判定における循環機能検査は,死の認識に対する見解が変貌しようとしつつある現在もなお重要な位置を占める.それは心電図であり,血圧の測定である.心臓はポンプであるという性格上,拍動流を生じなければ当然,血圧の値を得ることはできない.しかし,血圧を得られない状況でも,心臓の電気的活動を表現する心電図は何らかの変化を示していることが多い.すなわち,死の判定に際しては,心電図による心臓の静止が確実に認識されなければならない.その心臓の停止に対し,心臓マッサージ,心腔内注射,カテコールアミンの投与あるいは電気的除細動,心臓ペーシングなどさまざまの医療が行われる.
人間の死を迎えるとき設備の整わない所では,心臓の停止に伴う循環の停止の結果生じてくる脳の死が,その死の判定の最終的な意義をもつことになる.しかし,脳死という稀な現象の中では,心臓自体が健常に活動している特異な場合がある.それらが臓器提供者として認知されれば,循環機能検査は,その心臓が確実に正常であるということを実証する手段になるというきわめて矛盾した状況が生まれる.
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