今月の主題 死の判定と検査
技術解説
脳死判定のための脳波検査
安部倉 信
1
,
越野 兼太郎
1
,
池田 卓也
2
Makoto ABEKURA
1
,
Kentaro KOSHINO
1
,
Takuya IKEDA
2
1大阪大学医学部脳神経外科学教室
2大阪大学医学部附属病院中央手術部
pp.965-971
発行日 1988年9月15日
Published Date 1988/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913732
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脳死には脳幹死と全脳死との二つの概念があるが,両者間では脳波の臨床的意義が異なってくる.わが国では,厚生省の指針などで全脳死の立場より脳波が脳死の判定基準の一つとしてとりあげられていることから,脳死の疑われる症例においては脳波検査が必須となっている.技術的問題として各種アーチファクトの混入の問題があり,これを最大限取り除く努力が必要であるが,格段に条件の悪い病室での平坦脳波の判定には困難を伴うことが多い.また通常の脳波は,大脳半球表層の限られた範囲の電気活動を頭皮,頭蓋骨を介して記録しているという制約があるので,平坦脳波がただちに大脳皮質全体の機能停止を意味するとは限らない.しかし,平坦脳波は大脳皮質の広範囲で高度な機能障害を示すことには間違いなく,脳幹死を伴っているときには回復は不可能であると考えられる.
脳幹死の判定のための電気生理学的検査法として聴性脳幹誘発電位や短潜時体性感覚誘発電位は有用であり,今後両者を併用することによりさらに信頼度の高い結果を得ることができるものと期待される.
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