特集 産業医学と臨床検査
Ⅰ.総論
3 臨床検査からみた環境管理
児玉 泰
1
Yasushi KODAMA
1
1産業医科大学衛生学教室
pp.1269-1274
発行日 1984年11月1日
Published Date 1984/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912347
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□はじめに
労働環境中には一般生活環境中にはみられない特殊な化学物質や物理的条件が存在し,それらがそこに働く人たちの健康になんらかの影響を及ぼすことが少なくない.快適な職場環境を作り,働く人たちの健康増進を図ることは,労働衛生の基本とするところであり,人間の健康に悪影響を与える有害因子を主に工学的技術によって作業環境から除き,良好な作業環境を維持管理することを作業環境管理という.
そのためには,①作業環境中における有害物質の種類,性質,濃度,発生状態などの情報を正確に把握すること,②有害因子が作業環境になるべく入り込まないような生産工程,作業方法を用いたり,局所排気装置を設置したりすること,③定期的に作業環境中の有害因子のレベルを調べること,などが必要である.過去においては,作業環境中の有害因子による健康障害の発生する場合が少なくなかったが,積極的に環境管理を行うところまではいかなかった.健康診断により異常を見いだし,早期に治療を開始するとしても,その原因の存在する作業環境の改善管理が行われない以上,意味のないものである.まず第一に,健康障害を引き起こす作業環境中の有害因子を除去し,障害の発生を未然に防ぐことに重点が置かれなければならない.このような観点に立って,労働安全衛生法第65条は,作業環境測定の実施と作業管理について定めている.
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