今月の主題 モノクローナル抗体
総説
遺伝子工学の医療への応用
長野 敬
1
Kei NAGANO
1
1自治医科大学生物学教室
pp.1599-1606
発行日 1983年12月15日
Published Date 1983/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912069
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はじめに
遺伝子工学(gene engineering)の語が何を意味するのかは,多少あいまいである.新しい『岩波生物学辞典』(1983年3月)には,「遺伝子工学は,組換えDNA実験やDNAクローニングなどの遺伝子操作技術を利用する学問分野といえよう」とある.ところが,クローニングされるDNAそのものが組み替えで作られることも多いのだから,この記述は同じことを二度繰り返しているようなものである.「など」をどうとらえるかによって,いろいろの理解ができるだろう.
ことば尻にこだわる議論をいきなり持ち出したが,これは,これからの生物医学技術を全体としてどう展望するかということと関係がある.いろいろな技術のうちでも,抗体の特異性と腫瘍細胞の増殖能力を組み合わせたハイブリドーマ=モノクローナル抗体の技術と,遺伝暗号の普遍性とDNAの複製能力を組み合わせたプラスミド=遺伝子組み替えの技術とは,現在の進歩での双壁であるが,それにしても,そうしたものだけを別格のスーパー技術として神格化するのでなく,いっせいに進展しつつある数多くの先進的な試みの中で,一つのタイプとして位置づけるべきではあるまいか.
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