分離分析の技術Ⅰ・10
薄層アガロースゲル等電点電気泳動—体液蛋白と血清酵素アイソザイム分析
佐野 紀代子
1,2
Kiyoko SANO
1,2
1東京医科歯科大学医学部附属病院検査部生化学
2東京医科歯科大学医学部
pp.1192-1200
発行日 1982年10月15日
Published Date 1982/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911672
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はじめに
等電点電気泳動(isoelectric focusing;IEF)とは,蛋白質などの両性電解質をおのおのの持つ等電点(isoelectric point;pI)の差を利用して分離する方法である.等電点の原理に基づいて初めて分離を行ったのは,1912年の池田,鈴木らによる.その後1960代にSvensson1〜3)によりIEFの基礎が敷かれ,1966年Vesterberg4)が両性担体を合成したことが,今日のIEFの確立へと導いた.
当初,IEFは密度勾配をつけた自由溶液中で行っていたが,装置が複雑であり,泳動時間も長く,そのうえ多量の試料や試薬を必要とし,かつ多数検体を同時に処理できないなどの難点があった.そこで支持体中で行う方法が検討された結果,ほとんど電気浸透を示さないという理由からポリアクリルアミドゲル(polyacrylamide gel;PAG)が選ばれ,今日もっとも広く用いられている.一方従来から電気泳動の支持体として,一般化しているアガロースは電気浸透現象が大きいため,IEFの支持体として不向きであると考えられていた.しかし近年に至り,高度の精製あるいは陽性荷電基の導入などにより,通常の電気泳動ではほとんど電気浸透を示さないアガロースがIEF用として開発され,市販されてきた.
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