化学検査のうつりかわり・2
電解質
高原 喜八郎
1
1日本専売公社東京病院検査科
pp.185-192
発行日 1973年2月15日
Published Date 1973/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542907986
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はじめに
今から30年もさかのぼった1940年代の病院検査室の姿は,もちろん中央化もしていなく,医局研究室内の一部あるいは病棟の片すみで多忙な臨床医によって片手間に行なわれていた程度のものであった.当時の臨床検査手技の大半は病理形態細菌学が占めており,代表的参考書も「生物学的臨床診断学」*1(海軍軍医学校教本,金井 泉 著)とかいう名前であったと記憶する.
電解質などの検査種目としては,Na, K, Cl,Ca, Mg, CO2,pHなどが行なわれた揚合もあったが,一般に血清量は1種目につき1ml以上を必要とする滴定法あるいは肉眼比色法によっていた,1950年代にはいると第二次世界大戦による科学技術の進歩の影響を受けて,主としてアメリカにおいて光電比色計が急速に進歩実用化し,化学検査手技がつぎつぎと肉眼比色から光電比色法へと改良されていった.この間の事情は当時,アメリカの臨床化学技術の進歩をいち早くわが国へ導入された斎藤正行氏の著書1に詳しい.また同書には,当時としてはまだ目新しい炎光分光光度計(当時は焔光と書いた)に関する解説が巻末に詳しく紹介されていることは,わが国におけるこの方面の最初の資料の普及として意義あることと思われた.
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