特集 日常検査法—基礎と要点
部門別の基礎技術
Ⅶ.生理検査
臨床検査としての心音図
坂本 二哉
1
1東大第2内科
pp.1351-1353
発行日 1970年12月1日
Published Date 1970/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542907014
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検査の目的と特殊性
心音図記録の適応1)は,原則として医師の判断に基づいて決められる.その判断の最初にしてまた最後のものは聴診である.このことは,心音図の臨床検査としての第1の目的が,聴診法の客観化にあることを物語るものである.
心臓・大血管の正確な聴診は,心臓病の専門医でもしばしば重大なミスをおかすほどむずかしい.検査技術者が心音図を記録する場合,原則として記録部位などの指定は医師から与えられるはずであるが,医師の指示を絶対視することばかりがよい方法とは必ずしもいえない.この点に,心音図検査が他の諸検査とたいへん異なる一面がある.つまり客観化を要求する側の主観そのものに,常に判定の誤りが内臓されている可能性があり,検査員(医師の場合もある)は,その誤りを指摘する必要に迫られることがしばしばである.したがって心音図検査に携わる技術者には,記録そのものがこれでよいかどうか,常に考えるタイプの人が適している.慢然と記録された心音図は,記録としてすぐれていることはまずない.
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