特集 日常検査法—基礎と要点
部門別の基礎技術
Ⅳ.細菌学
腸管感染症の細菌学的検索
三輪谷 俊夫
1
1阪大微生物病研究所
pp.1281-1288
発行日 1970年12月1日
Published Date 1970/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542906999
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はじめに
腸管感染症の原因菌は一般に外来性の菌でありながら,一時的な通過菌transient microbesと異なり,唾液,胃腸液などの生体防御作用に抵抗して腸管に到達し,常在菌intestinal floraの拮抗作用を排除して,それぞれの菌種に応じて固有な腸管部位に定着・増殖し,感染を起こさせる.急性期では一般に患者便中の病原菌数は1gあたり1×107以上にも達する.
健康人糞便中の常在菌には腸内細菌群,乳酸菌群,レンサ球菌群,ブドウ球菌群,嫌気性菌群,真菌群などいろいろな菌種が含まれ,糞便1gあたりの生菌数は腸内細菌群104−1010,レンサ球菌群104−1012,嫌気性菌群106−1012程度といわれている.病原菌の検出にはこれら常在菌が障害になるのであるが,近年,特定な病原菌のみの発育増殖を許し,非病原性常在菌の発育を抑制するきわめてすぐれた選択培地が実用化されているので,急性期における菌検出は比較的容易である.しかし,保菌者回復期軽症患者などでは,菌数が少なくなっており,菌検索は必ずしも容易ではない.糞便1gあたり103以下の菌数しかいない場合には,すべての病原菌に選択増菌培地が実用化されているわけではなく,病原菌検出はほとんど不可能に近いものが多い.
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