技術解説
薄層クロマトグラフィーの実技
原 昭二
1
HARA SHOJI
1
1東京薬科大学薬化学教室
pp.247-249
発行日 1963年4月15日
Published Date 1963/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542906102
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薄層クロマトグラフィーDünnschicht-Chromatographie;thin-layer chromatography(TLCと省略される)は,数年前より世界各国に急速に普及し,化学の広い範囲の研究に応用されている新しい分析技術である。その特色としては,従来の種々のクロマトグラフィーと比較してより微量の試料が取り扱えること,分離能が鋭敏なこと,展開の迅速性(普通15〜60分),検出の確実なこと(濃硫酸などの腐蝕性の試薬を噴霧できる),そして操作の簡易なことなどがあげられる。
この方法は,吸着剤の薄層の上で混合物を溶媒によって展開し,分離・分析するもので,従来はカラムクロマトグラフィーの予備試験法として使われるに過ぎなかったが,Kirchnerらはデンプンやセッコウを固着剤としてガラス片または板の上にシリカゲルの吸着層を作り,植物成分の分離に応用した。これはクロマトストリップまたはクロマトプレート法と称し,今日のTLCの前身となっている。1958年以降Stahlの研究によって画期的な改良がなされ,吸着剤・操作法は標準化・簡易化された。そして再現性と数量的な表現を備えた分析法としてその形態を整えるに至った。この法はカラムクロマトグラフィーの微量法に当り,吸着および分配の両原理によって混合物を分離するものである。
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