技術解説
血清学的検査にたずさわる人のために
松橋 直
1
1東京大学血清学
pp.16-18
発行日 1957年4月15日
Published Date 1957/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905315
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はじめに
血清学といゝますと,何か耳あたらしい学問のように感ずる方もおられるときいております。しかし,血清学は決して新しい学問ではありません。血清学の原理を応用した種々の検査法は,前世起の絡りから,病原体の同定に,また,病気の補助診断として,さかんにもちいられております。たとえば,みなさんおなじみの,腸チフスの補助診断法であるWidal反応の発見が1896年であること,また,Wasserman反応の創案が1906年であることをおもいおこせば,血清学の歴史はかなり古いものであることがおわかりのこととおもいます。そして,免疫の成立,抗体の産生,試験管内の反応などの解釈に便利な側鎖説をたてたEhrlich補体結合反応その他の創案者であるBordet,ABO式をはじめ数多くの血液型の発見をしたばかりでなく,血清学のあらゆる領域で活躍したLandsteiner,免疫化学に大きく貢献したHeidelhergerなどによつて,今日の血清学が確立されたのであります。わが国ではどうであつたかと申しますと,血清学は細菌学,病理学,法医学などの研究方法の一つとしてさかんに応用され,研究成果もゆたかではありましたが,血清学を対象とした専門の学問がはじまつたのは,故三田定則先生が大正7年,東京大学に血清化学講座を開かれてからでありましよう。
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