特集 造血器腫瘍
Ⅳ 検査の実際
7.移植―1)造血幹細胞測定法
海老原 康博
1
,
辻 浩一郎
1
Yasuhiro EBIHARA
1
,
Koichiro TSUJI
1
1東京大学医科学研究所先端医療研究センター細胞療法分野
pp.1443-1449
発行日 2002年10月30日
Published Date 2002/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905256
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はじめに
血液中には形態と機能を異にする種々の血球が存在しているが,それらはいずれも固有の寿命で崩壊している.この膨大な数の血球を供給し続けるためには,血球の源となる未分化な細胞のプールが必要であり,これらの細胞を造血幹細胞と呼ぶ.造血幹細胞は自己複製能(細胞分裂により自己と同じ能力を有する細胞を複製する能力)とすべての血球細胞に分化できる性質(多分化能)を有することで自己のプールを保持し,一生にわたる血球産生を可能にしていると考えられている.造血幹細胞は分化・増殖し,各種造血前駆細胞の段階を経て最終的には成熟血球へと分化,成熟していく(図1).この過程は様々なサイトカインにより調節されていることが明らかとなっている.
造血幹細胞を移植することにより病的造血を正常造血に置換することを目的とする造血幹細胞移植療法は,種々の血液疾患や腫瘍性疾患に対する根治的治療法として確立している.さらに最近では,造血幹細胞を体外で増幅しようという試みや造血幹細胞を標的細胞とする遺伝子治療も行われようとしている.本稿では,これらの治療・研究の根本となる造血幹細胞の測定法について概説する.
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