今月の表紙 電気泳動異常パターンの解析シリーズ・8
m-AST結合免疫グロブリンの解析
堀井 康司
1
Koji HORII
1
1慶應義塾大学医学部中央臨床検査部
pp.820-822
発行日 2002年8月15日
Published Date 2002/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905154
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血清中の免疫グロブリンが酵素と高分子複合体を形成したものを酵素結合性免疫グロブリンと呼び,LDH,ALP,CKなどで認められ,このシリーズで以前取り上げたマクロアミラーゼも同様なものである.さて今回は,AST (GOT)結合免疫グロブリン症例を取り上げたいと思う.ASTは健康診断で必ず測定されるので一般の方々にもよく知られているが,ASTには2種類あるのを本誌の読者であればご存じであろう.ASTには細胞質に局在しているs-AST (supernatantAST)とミトコンドリア内に局在するm-AST(mitochondria AST)があり,分子量は約10万とほぼ同様であるが電気易動度はs-ASTがα2グロブリン位であるのに対しm-ASTはslow-γ位であり,抗原性も全く異なっている.現在まで報告されているAST結合免疫グロブリンはほとんどがs-ASTとの結合であり,m-AST結合免疫グロブリンは非常に稀である.今回紹介する症例は,肺癌の全身転移と診断され経過観察中であった74歳女性で,ASTが114IU/lと高値なのに対しALT9IU/lと低値であり乖離が認められたため,ASTアイソザイムを実施して異常活性が観察された.図1に,同一条件で電気泳動した症例の血清蛋白分画像とASTアイソザイム像を示した.ASTはヒト肝ホモジネート上清とs-AST結合免疫グロブリン例も同時に分析した.
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