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緑膿菌とQuorum-sensing
舘田 一博
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1東邦大学医学部微生物学教室
キーワード:
quorum-sensing
,
Las
,
rhl
Keyword:
quorum-sensing
,
Las
,
rhl
pp.1133-1135
発行日 2001年10月15日
Published Date 2001/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904890
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1.Quorum-sensingとは
自然界において,微生物は様々な環境のもとで存在しなければならない.栄養源の乏しい環境,低・高温,激しいpHの変化はもちろんのこと,生体内においては貪食細胞,あるいは抗菌性液性因子(補体,抗体,リゾチームなど)が存在する環境での生存を余儀なくされる.このような状況のなかで,細菌は自らの存在環境の変化を敏感に感知する機構を獲得してきた.特に生体内においては,宿主感染防御能へ抗するための効果的な病原因子の発現が要求される.最近になって,菌は環境における自らの濃度を感知し,その濃度に応じて病原因子遺伝子の発現を巧妙に制御していることがわかってきた.菌と菌との情報伝達機構,すなわちquorum-sensingと呼ばれるシステムである.これはビブリオ属細菌Vibrio fischeriの培養において,菌の増殖に応じて蛍光物質の産生が見られるという現象から見つかってきたものであるが1),その後,緑膿菌をはじめとする多くの病原細菌が本システムを用いて病原因子発現をコントロールしているという事実が明らかとなっている.以下にquorum-sensingシステムについて簡単に説明するとともに,緑膿菌を例に本システムの重要性,感染症発症病態とのかかわりについて概説する.
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