今月の表紙 帰ってきた寄生虫シリーズ・20
トリパノソーマ
藤田 紘一郎
1
1東京医科歯科大学大学院国際環境寄生虫病学
pp.806-807
発行日 2001年8月15日
Published Date 2001/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904829
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ヒトに病原性を有するトリパノソーマには,アフリカ睡眠病の病原体であるガンビアトリパノソーマ(Tripanosoma brucei gambiense)とローデシアトリパノソーマ(T.b.rhodesiense),およびシャーガス病を起こすクルーズトリパノソーマ(T.cruzi)がある.
ガンビアトリパノソーマはアフリカ中央部から西部に,ローデシアトリパノソーマはアフリカ東南部に分布している(図1a).最近,ウガンダでは,スーダン人難民の移入によって感染が拡大し,問題となっている.また,サファリなどの観光旅行での感染例も増加している.ヒトの血液,リンパ液内では錐鞭毛期(トリポマスチゴート)型が二分裂で増殖している(図2).大きさは14~33×2~4μmで変異に富んでいる.この血中のトリパノソーマは,虫体表面の糖蛋白の抗原性を次々と変化させることによって,宿主の抗体による攻撃から逃れて長期間寄生し,感染の機会を待っている.ツェツェバエに取り込まれたトリポマスチゴート型は,中腸内で上鞭毛期(エピマスチゴート)型から発育終末トリパノソーマ型に発育し,ツェツェバエの刺咬時に新しい宿主に注入される.
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