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脳の中枢神経を疲労させる原因物質と阻害物質
山本 隆宣
1
,
Eric A.Newsholme
2
1帝塚山大学経営情報学部健康科学研究室
2Department of Biochemistry, University of Oxford
キーワード:
中枢神経疲労
,
遊離型トリプトファン
,
2-aminobicyclo[2
,
2
,
1]heptane-2-carboxylic acid
Keyword:
中枢神経疲労
,
遊離型トリプトファン
,
2-aminobicyclo[2
,
2
,
1]heptane-2-carboxylic acid
pp.782-785
発行日 2001年7月15日
Published Date 2001/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904823
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1.中枢性疲労研究の背景
近年の産業構造の著しい変化は,その疲労が「脳」に一局集中を呈してきているように思える.慢性疲労症候群(CFS)はもとより,情報疲労症候群,情報ストレス症候群,インターネット依存症などはその最たるものの象徴といえる.この大部分は中枢性の疲労を伴い,病態時のみならず,健康人の生理現象でもありその社会的意義は極めて大きい.にもかかわらず脳の疲労,つまり中枢神経系の疲労(中枢性疲労)に関する生化学的根拠に対する研究はあまりにも蓄積が乏しい.一方筋肉疲労(末梢性疲労)は解糖系促進に伴う消耗と蓄積に集約されるが,特に筋肉内プロトン蓄積とpH低下が筋小胞体からのCa2+の放出ならびに解糖系律速酵素(6―ホスホフルクトキナーゼ)の機能低下に影響を及ぼすことが原因と明確に結論づけられている.
とはいえ,中枢性疲労の存在の概念的提唱はすでに1960年代初めから報告されている.猪飼(1961)5)は筋力の生理的限界と心理的限界という表現で筋出力にかかわる中枢性制御の重大さを指摘した.後にAsmussen (1979)6)は猪飼の報告した筋力に対する中枢性疲労説を明確に支持した.
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