一口メモ
いぼ状癌
泉 美貴
1
1東京医科大学第一病理学
pp.1398
発行日 2000年10月30日
Published Date 2000/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904587
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いぼ状癌(Verrucous carcinoma)は,概念を提唱した病理医の名を冠して,Ackerman's tumorとも呼ばれる.臨床的には癌としか考えようのない口腔内の巨大な増殖性病変に対して,病理がどうしても悪性と診断しないことに業を煮やした臨床医が,彼に患者を見せることによって,ついに癌であることを認めさせたという経緯がある.
弱拡大像における細胞像は,あたかも錯角化細胞様のオレンジG好性の角化細胞が多数出現する.しかし強拡大で観察すると,成熟した細胞質に対して不釣り合いな類円形ないし短紡錘形の核が存在する.特徴的所見として,細胞形が多稜形というより丸みを帯び,細胞質は強い好酸性を示し厚みがある.核は小型で異型性はなく,小さい核小体が1~2個認められる.鑑別診断としては高分化型扁平上皮癌や尖圭コンジローマが挙げられる.前者では核に少なくとも多少の異型性を示す.後者では細胞質の厚みがより乏しく,koilocytotic cellsも出現する.核の異型性が乏しいことから,細胞像のみでClass Vと判定するのは非常に困難で,臨床所見との対比が必須である.内視鏡的に強い乳頭状の増殖病変であるにもかかわらず,細胞異型が乏しい角化細胞が多数採取された場合には,いぼ状癌を鑑別診断に含むべきである.
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