今月の主題 糖尿病―診断・治療の指標
巻頭言
早期,軽症時からの徹底した管理を
河盛 隆造
1
Ryuzo KAWAMORI
1
1順天堂大学医学部内科学
pp.1111-1113
発行日 1996年10月15日
Published Date 1996/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903035
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糖尿病,特にインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)は,多因子の遺伝素因を有する症候群であると言われる.遺伝素因に,加齢,高エネルギー・高脂肪食,運動不足に基づく肥満,妊娠・出産,感染症,さらに精神的ストレスなどの環境因子が重なることによりNIDDMが発症する.WHOは,糖尿病を発症させないことを第1次予防,血管合併症の発症を防ぐことを第2次予防,合併症の進展による臓器障害のために非活動状況に陥ることを防ぐことを第3次予防,と呼んでいる.残念なことではあるが,現状の診療では第3次予防に主眼が置かれていると言わざるをえない.しかし,ライフスタイルに早期から介入し,第1次,第2次予防を成し遂げることも決して不可能ではなくなった.
重症度とは個々の患者が発症から現在までに呈した臨床像の総和であるとされているが,その概念自体明確ではなく,治療反応性を指したり,長期的,生命的予後を指す場合など一定していない.また,種々の病因によって発症する臨床症候群である場合,その重症度を画一的に論ずることは当然ながら無理と言わざるをえない.糖尿病患者の重症度を,診断,分類するに際しても,その程度に応じて便宜上,軽症,中等症,重症という分類が用いられている.しかし,実際にはどの症例を軽症と定義するのかということになると,明確な解答が得られないのが実状である.
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