特集 免疫組織・細胞化学検査
臓器別応用例
2.呼吸器系
1)肺腫瘍
岡 輝明
1
Teruaki OKA
1
1東京大学医学部病理学教室
pp.147-152
発行日 1995年10月30日
Published Date 1995/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902696
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はじめに
呼吸器系(肺・気道)にはきわめて多種類の腫瘍が発生し,その組織像は多彩であり,組織型に基づいて治療法が決定されたり予後が推定されるため,正確な組織診断が求められる.組織診断はHE染色標本で行うが,特殊染色(粘液染色,Grimelius染色などのほか,肺の構造との関係を明らかにしたり血管侵襲や胸膜浸潤を確認するためにElastica van Gieson染色などの弾性線維染色は必須),免疫組織化学染色の結果や電顕所見などを参考にしつつ診断を確定する.ただし,病理診断は患者情報,画像所見,肉眼像などの正確な把握なしには行えず,むしろこのことこそが重要であることを強調したい.
手術例や剖検例では十分な量の組織が観察可能であり,特殊な例を除き,HE標本でおおむね適切な診断に到達しうるが,低分化癌,大細胞型の悪性リンパ腫,悪性黒色腫あるいは胚細胞腫瘍などは組織像が類似していて,HE標本のみでは相互の鑑別が難しい場合もある.このような場合,keratinなどの上皮性マーカー,リンパ球マーカーのleukocyte commonantigen (LCA),S 100蛋白あるいは悪性黒色腫のマーカーであるHMB45,およびplacental alkalinephosphataseなどを染色すれば容易に鑑別できることがある.一方,小さな生検検体では診断確定の困難なことも少なくない.
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