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MRSAの感染対策に手指の消毒
野口 行雄
1
1埼玉県立がんセンター
キーワード:
MRSA
,
手指の消毒
Keyword:
MRSA
,
手指の消毒
pp.903-904
発行日 1992年8月15日
Published Date 1992/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542901184
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メチシリン・セフェム耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症1)が社会問題化している.第三世代セフェム剤の濫用で正常細菌叢が破壊されて惹起されたのである.黄色ブドウ球菌は皮膚の常在菌でもあるので,医師の手指を介して患者に伝染する.伝染経路を断っことが,伝染病予防の定石である.
私どもの病院のMRSA感染症は1989年6月に手術目的で外科に転入院して来た患者から主として外科系の病棟に広がった.院内感染症対策委員会では第三世代セフェム剤の術後感染予防投与の自粛と手指消毒の徹底励行を同年秋に呼びかけたが.結果は惨憺たるもので,翌1990年には大流行となった.1991年に各病棟に自動手指消毒器(サラヤBM-5500)が配備された(図1).消毒液の主成分は83%エタノール,0.2%グルコン酸クロルヘキシジンで,この器械に手を差し入れるだけで自動的に消毒液が噴霧される.エタノールは揮発性で,速乾性である.MRSA保菌者の診察後に手指を消毒することで,MRSA保菌者がこの年に半減した(図2)ことは,4月21日付け朝日新聞(夕刊)で報道されたとおりである2).
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