- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.動脈硬化の成因としてのフリーラジカル反応変性(LDLスキャベンジャー受容体説)
動脈硬化の成因として酸化変性低分子リポ蛋白(LDL)の生体内生成の可能性と,そのリポ蛋白の血管壁マクロファージへの取り込み反応が提唱され,抗酸化剤が予防および治療として脚光を浴びるようになった.フリーラジカル反応が酸化変性LDLを介して動脈硬化に導く機序の仮説1)は以下のようである.
酸化LDLができると,動脈内皮細胞のLDL受容体が酸化LDLを認識しなくなり,代わりに内皮相にあるマクロファージの受容体がそれを認識してマクロファージ内に酸化変性LDLを取り込むことになる.酸化変性LDLを取り込んだマクロファージはマクロファージの循環が停止し,血管の内皮下の空間に泡沫細胞として停滞する.この泡沫細胞はLDLを取り込んでいるので,コレステロールおよびコレステロールエステルを含有しているので,これらが動脈壁に蓄積し,動脈硬化となるという仮説で,変性LDLスキャベンジャー受容体説(modified LDL scavenger receptortheory)と呼ばれている.この説による過程には複雑な相互反応が入り組んでいる.まず内皮細胞とLDLが接触すると酸化LDLができる.マクロファージ細胞は血管壁と血液のある血管腔とを循環しているが,この循環は酸化LDLにより阻害させ,LDLを取り込んだマクロファージは血管壁の細胞空間に蓄積する.循環を阻害されたマクロファージは酸化変性LDLを取り込みやすくなる.そしてLDLを取り込んだマクロファージは酸化変性LDLによって血管腔への放出を阻害される.さらに酸化変性LDLは動脈壁内皮細胞を障害する.そこに血小板を中心とした細胞が集まり凝固系活動が活発化する.血栓形成の始まりである.このようにして,動脈硬化が進展すると考えられている(図1).
Copyright © 1992, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.