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一般検査についてみると,シンポジウムは「形態学的検査としての尿沈渣の現状と将来」というテーマで4人が講演した.この中で尿中の赤血球を顕微鏡(光学および微分干渉)で観察,あるいは自動血球計数装置から粒度分布を描いてそのパターンからそれぞれ非糸球体出血,糸球体出血,混合型出血に分け,各種腎疾患との関係について検討したものがあった.これらの研究は数年前から発表がなされてきている.筆者は6年前から,沈渣で明確に鑑別できるものはglomeru―lar bleedingかnon-glomerular bleedingかを記載している.赤血球は尿という厳しい環境下に浮遊しているため,出血後の形態変化も避けられない.したがって,この形態分類で疾患とすべて一致した相関が得られるわけではないが,沈渣の情報としては価値があるように思われる.今後各施設で赤血球形態についての報告がさらに広がることを期待したい.一方,腎尿細管上皮の鑑別とその意義についても発表があった.鑑別の手段として免疫染色を用いて腎尿細管上皮を3つの型に分類するというもので,一般検査ではなかなかできない実験を詳細にわたって検討されていた.これらは,とかく問題を提起する腎尿細管上皮の鑑別につながる的確かつ基礎的な検討と思われた.
一般演題は58題あり,3つのセクションに分けられて同時に発表が進行された.その内訳は精度管理9題,沈渣関係16題,尿自動分析4題,微量アルブミン9題,便潜血5題,寄生虫卵4題,髄液に関するもの3題,その他尿検査関係8題であった.なかでも尿沈渣に関する演題を集めたセクションは黒山の人だかりであったが,これは今もなお一般検査では尿沈渣に多くの関心が寄せられている証拠である.内容では赤血球形態に関する研究が多く,シンポジウムも考え合わせれば今回,特に際だっていたように感じられた.多くの演者が変形赤血球と疾患の関係を追及していたが,1題のみ変形赤血球の成因をin vitroで検討していたものに目を引かれた.すなわち,赤血球の変形は浸透圧の変化,とりわけ低浸透圧から高浸透圧へ移る条件が必要であるという.微量アルブミンに関してはキットの検討が多かった.精度管理についてはほとんどが沈渣に関するもので,例えばコントロールサーベイを行い,その成績を考察しているものが目だった.もとより日常検査での精度管理は重要であり内部,外部といった方法を問わずつねに怠ってはならない.尿自動分析はT社製のものについて検討していた.一般検査の自動化率は臨床化学,血清,血液の各検査に比べて低い.また自動化の最大の利点は精度の向上にあり,主として人手に頼って行われる一般検査にとって,さしあたりこの自動化は1つの具標であろう.演者によってはスクリーニングであればこれで有用とは言っていたが,異口同音,さらに改良されることを期待していた.便潜血は免疫学的方法について,従来の定性から定量ができるA社の分析装置を使用した一連の基礎的検討を述べていたものが3題あった.筆者が興味を持った演題では,腹膜灌流患者で排液中の白血球を試験紙でチェックすることにより,腹膜炎を早期に発見できることも可能というものと,アシッドバイオレット17を用いた尿蛋白試験紙の検討で,発表者はそれを開発しその有用性を説いていた.すなわち,BPB系の指示薬では反応しにくいグロブリンもアルブミンと同様に反応するためBJ蛋白も検出できるというものであった.
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