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45億年も以前に地球が誕生し,20億年もの長い間を経て,今から27億年前に地殼が安定したと考えられている.さらに10億年も経過して,ようやく生物が誕生したらしい.そして人類が誕生したのは100万年前と推定されている.すなわち,人類の歴史は地球の歴史のうち99.9%以上も過ぎてからのものに過ぎないのである.地球の歴史の中で,大きな造山運動が数回はあったと考えられているし,人類が誕生してからだけでも4回の氷河期を経験している.こうした自然の環境が大きく変動している中で,生物はそれに適応して進化を遂げてきたのである.きっと,生物にとって地球は厳しい生活環境であったに違いない.それになお耐えられるように体内の調節機能が発達して,ホメオスターシスが確立されたのであろう.臨床検査値の生理的変動はそうした調節機能の結果なのである.
人間社会における変革を"波"にたとえて,アメリカの未来学者であるアルビン・トフラー博士は3つの波に分けている."第1の波"は,原始時代からヨーロッパで起きた産業革命までの農業社会であり,人間は自然を畏敬し,自然と調和して生きていた."第2の波"は,産業革命から20世紀を生きつづけた産業社会である.そして,21世紀に向けて,"第3の波"超産業社会へと着実に移行しつつある."第1の波"が自然との調和の上に成り立ったとすれば,"第2の波"はまさに自然を畏れず,人間が自然に挑戦した時代なのである.その結果,農業社会で経験しなかった,新しい人為的な生活環境にさらされることになった.地球上での変化にとどまらず,海底へ,そして宇宙へと人間の生活の場を拡げつつある.そればかりか,原爆・水爆による放射能汚染,産業廃棄物による地球上および地球周辺の空間の汚染,さらに地球自然の貧欲なまでの破壊,など数えきれないほどの生活環境の変化が問題になっている.
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