増大号 心電図判読のスタンダード 基本を極めて臨床で活かす!
2章 波形に注目—読み解くポイント
T波,U波
有田 卓人
1
1心臓血管研究所付属病院循環器内科
キーワード:
陰性T波
,
T波増高
,
T波平低
,
陰性U波
Keyword:
陰性T波
,
T波増高
,
T波平低
,
陰性U波
pp.1195-1199
発行日 2024年10月15日
Published Date 2024/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542203742
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
T波は心室の再分極を表す波であり,QRS波の幅が正常で狭い場合,T波はQRS波と同じ向きである.そのため,T波は一般的にQRSの主軸と同方向を向く場合を正常と考え,正常心電図にも陰性T波が存在し,成人では肢誘導のうちaVR誘導で陰性,胸部誘導ではV1およびV2誘導で陰性T波を認めることがある.心筋虚血による心内膜側の活動電位の持続時間が短縮する場合や心肥大(酸素消費が大きくなるため相対的酸素不足となる)の場合に陰性T波が観察される.T波の高さに関しては,正常ではQRSの1/10(あるいは1/5とする説もある)以上と考えられている.
U波はT波の後に続く小さな振れであり,その成因はいまだに不明とされるが,Purkinje細胞の再分極を表す可能性や,心室壁にあるM細胞の活動電位持続時間を表す可能性などが示唆されている.通常はV2〜V5誘導で認めることが多く,正常のU波はT波と同じ極性を示し,その高さはT波の高さの10%程度とされている(図1).臨床的にはV4〜V6で観察される陰性U波は,冠動脈左前下行枝の重症虚血を反映することが有名である.
Copyright © 2024, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.