綜説
T波
渡部 良夫
1
,
西村 昌雄
1
Yoshio Watanabe
1
,
Masao Nishimura
1
1名古屋保健衛生大学総合医科学研究所心臓血管部門
1Cardiovascular Institute, Fujita-Gakuen Univ.
pp.247-255
発行日 1979年3月15日
Published Date 1979/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203329
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T波が心室筋細胞活動電位の第3相(急速再分極相)の反映として作られる心室再分極波であることは,心電図学上確立された概念であるが,では正常T波形の成立に個々の心筋細胞の再分極が如何なる役割を演ずるのか,あるいは異常T波が心室各部の再分極相の如何なる変化に由来するのかといった基本的問題の厳密な解答は,まだ与えられていない。一体心表面や体表面の細胞外誘導で記録される心臓電気現象は,脱分極相と同様再分極相でも心筋細胞間の電気的打消し合いの産物であり,例えばT波の構成に関与するのは再分極時の全起電力の僅か4%に過ぎず,残りの起電力は相互に打消されて心電図には現れないという1)。このように述べると,T波は心臓電気現象のごく一部を表現するのみで心臓全体の再分極を表さないと誤解される惧れもあるが,実際は脱分極相の異常を来たさない程度の病態でも,容易に再分極相に影響を及ぼして電気的打消し合いの均衡を破り,T波に異常を生ずるので,臨床的にもT波変化の病態生理学的意義は大きいと考えられている。以下本稿では一般的に見たT波の成因と臨床的意義を概説するが,著者らが最近明らかにした二峰性T波の特性についてやや立入った記述をすることを,予めお断りしておく。
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